なあ、悠詩
土曜日に結婚式に出席した。
雲ひとつない青空だった。
私の中でとても印象的なことがあった。
式の最後に外で風船を一人一つ渡されたのだ。
同時に空へ飛ばして祝福しようという趣旨だった。
人数分なので50個ぐらいはあっただろうか。
その中のいくつかがフライングで空へ舞い上がった。
何人もいればこういうこともある。
「君は誰よりも早く遠くにいきたいのかな?」
空を見上げながらそんなことを思った。
そして一斉に飛ばすタイミングになった。
私も手に持っていた風船をそっと飛ばした。
ちょっと遅れて皆の後をついていく。
と思いきやすぐに木の枝に引っかかってしまった。
そこにゆるやかな風が吹いた。
体を揺らしながらなんとか枝と枝の間をすり抜けていこうとする。
だけど枝の突起で割れてしまいそうでハラハラする。
「頑張れ!」
思わずそう思った。
間もなく他の風船に大きく遅れて青空へ旅立った。
なあ、悠太。
この時、お前のことを思ったのさ。
ゆっくりでいいのさ。
青空はどこへも行きはしないから。
一番じゃなくていいのさ。
青空はどこから見ても青空なのだから。
焦らなくていい。
穏やかにゆっくりと歩んでいきなさい。
私が後ろからそっと見守ってあげるから。
私もゆっくり歩んでいくから。
披露宴会場に移動する時にふと空を見上げた。
遠くに風船たちが星のように小さく見えた。
きっと私の風船もそこにいるのだろう。
目に見える早い遅いなどと小さなことだ。
視点を広げて穏やかに歩んでいこう。
from オトウサン
—悠詩(0歳4ヶ月) with 父(32歳) and 母—